ビル・エヴァンスとフルート

ビル・エヴァンスは、ピアニストとしてのほとんどをベース、ドラムを率いたピアノトリオを中心に活動しました。それ以外にも、ときに企画ものとしてか、もしくは収入を得るためのアルバイト感覚で、ゲストを迎え入れての録音をしていました。

その中でフルートをピアノトリオに加えた作品が二つあります。一つはハービー・マン(Herbie Mann)と録音した「ニルヴァーナ」、もう一つはジェレミー・スタイグを迎えた「ホワッツ・ニュー」です。

ハービー・マンとビル・エヴァンス・トリオの録音は、スコット・ラファロの交通事故死から5ヶ月ほどたった1961年12月に行われました。エリック・サティのジムノペディ第2番や、タイトルトラックの「ニルヴァーナ(解脱、涅槃の意)」は、アルバムジャケットが象徴するような独特な世界観を作り出し、ビル・エヴァンスの録音としては異色な作品となっています。

グループとしては、チャック・イスラエルを新しいベーシストに迎えたばかりで以前のトリオのような安定感はまだないものの、「アイ・ラブ・ユー」などそれ以前にもエヴァンスが取り上げてきた曲では素晴らしい演奏を聴かせています。

ジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)はエヴァンスよりも13歳ほど若いフルーティストですが、エヴァンスがスタイグの熱演に惚れてこのセッションを実現させています。最初はテレビ番組での共演で、その後スタジオセッションを重ねこのアルバム「What’s New」が誕生しています。

ハービー・マンとの演奏に対して、このセッションはよりもアグレッシブで力強い演奏が際立った録音です。ストレート・ノー・チェイサー、枯葉、ソー・ホワットなどが特にそうです。スタイグは顔の筋肉が一部不自由で、唇も半分ほど動かないため、これが彼の独特なサウンドを生み出す一因となっています。音域がもっと低かったら尺八と間違えてしまいそうなサウンドです。

ビル・エヴァンス自身も軍隊時代フルートを演奏したため、その難しさをよく知るだけに、スタイグの演奏に感動したとコメントしています。

ピアノ・トリオから少し離れて、フロントマンを得たビル・エヴァンスの演奏もとても楽しめます。ぜひどうぞ。

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