楽譜「ジャズ・ピアノ・トランスクリプション/ビル・エヴァンス/ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」出版のご案内

南国ピアノ芸術ブックストアのネットショップサイトを立ち上げておよそ一年になります。この度、当店は自社で楽譜を出版することとなりましたので、ここにご案内申し上げます。

今回ご紹介する楽譜は、ジャズピアニストのビル・エヴァンスが、1977年に録音した「A House is not a Home」という曲を採譜したものになります。収録されたアルバムタイトルは「I Will Say Goodbye」。有名な「You Must Believe in Spring」と並んで、ミシェル・ルグランの名曲がタイトルトラックになった作品の一つです。

「A House is not a Home」は1964年の同名映画に登場する曲で、アメリカの歌手ディオンヌ・ワーウィックが録音したのが最初と言われます。サラ・ヴォーンの「ラヴァーズ・コンチェルト(1965)」や、フランキー・ヴァリによる「君の瞳に恋してる(1967)」に近い、60年代独特のサウンドが素敵なポピュラーソングでした。その後、80年代にはルーサー・ヴァンドロスがカヴァーするなど、多くのミュージシャンに親しまれた名作です。

この曲がどのようにしてビル・エヴァンスに選ばれたのかは不明ですが、70年代のエヴァンスは、プロデューサーのヘレン・キーンが選曲を提案し、エヴァンスがそれを取り入れて短い時間で仕上げていく、という作業がなされていたようなので、その一つだったのかもしれません。

この曲でのエヴァンスの演奏は、70年代以降の彼の演奏の特徴ともなる変則的なアルペジオが随所に見られます。そして、エヴァンス本人もマリアン・マクパートランドのインタビューなどで口にしていた「内声の響き」も意識した演奏で芸術的なアプローチも忘れていません。

トリオによる演奏の録音ですが、今回の採譜はピアノとベースを取り上げました。ベースが合流するのは途中からで、最初のテーマはピアノソロです。ビル・エヴァンスのソロピアノ、特にバラードはテンポをルバートで自由な表現に終始する傾向にありますが、動きつつも軸となる拍を採譜の中で意識しました。4小節目などがそれに当たります。また、エヴァンスの演奏は四拍子と三拍子が行ったり来たりして複雑なリズム感が顕著(「How My Heart Sings」など)で、この演奏でもそういった点が見られます。5小節目の最初は2拍3連にととらえ、書き方としては四分音符+1拍3連の方が見やすいのですが、音源から聞き取れるリズム感を重視しています。

ジャズを楽譜に書き出すのは難しく、とりわけピアノの録音は和音の構成音が倍音なのか判別がつかなかったり、鍵盤を押していてもハンマーが弦に到達していないかもしれないものがあったり、奏者は意図していないのに発音していたり(しかし音楽としては重要な要素であったり)と、偶然起こった感動こそがジャズであり、それを完全に書き出すなど不可能に近いとさえ思えてしまいます。しかし、ビル・エヴァンスによる演奏は実際にあったものだし、それを再現してみたい願望と、多くのビル・エヴァンス・ファンの皆様と共有したい気持ちから今回の出版に至りました。

ご指摘、ご要望もあるかもしれないと予想もしております。真摯に受け止め、今後の出版活動に役立ててまいりたいと思いますので、その際はどうぞメールにてお寄せください。

他にもまだ楽譜になっていない名作がたくさんあると思いますので、これからもそれらを形にしていく挑戦を続けていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

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