楽譜「ジャズ・ピアノ・トランスクリプション/ビル・エヴァンス/リトル・ルル」予告編

Jazz Piano Transcription –
A House is not a Home by Bill Evans
に続く第2弾の準備を進めています。そのサンプルオーディオが出来上がりましたので、YouTubeに公開しました。

曲は「Little Lulu」。アメリカでは有名なテレビアニメの主題歌です。1964年の「Trio’64」に初めて収録されてから何度か録音されている、ビル・エヴァンスの中期の作品で聴ける曲です。ビル・エヴァンスの選曲は、マネージャー/プロデューサーのヘレン・キーンが時折どこからか曲を持ってきてエヴァンスに紹介することがあったようで、他のジャズアーティストが取り上げていない独奏的で特徴の一つとなっている選曲の理由の一つともいえます。

今回は1967年のアルバム「Further Conversations with Myself」バージョンを採譜しました。「Conversations with Myself」でできなかったことをやりたかったというエヴァンスの意向は、多重録音による芸術的作品を追及した前作に比べ、よりセッションカラーの強いものとなっています。ピアノトリオ版の方がよく知られている演奏であったようにも思いましたが、ピアノの採譜という点からアレンジの参考にもなりうると考え、2台ピアノ版(多重録音)を選びました。

実際の録音が2台のアコースティックピアノであるのに対し、サンプル・オーディオでは聞き分けやすいようにセカンドピアノの音色を電子ピアノにしています。ステレオ・パンニングしているので、ヘッドホンを使用すると聞きやすいかと思います。1分16秒あたりで一部実際の楽譜をご覧いただけます。

採譜について思ったことをここに記しますと、結論からしてピアノ演奏を100%楽譜に起こすのはかなり難しいと感じています。理由はいくつかあげられます。

  • ピアノという弦楽器の特性として、共鳴や倍音がなっている可能性が高く、判断が難しい音が多々ある。
  • ジャズという音楽の性質からすべての音符が確実に演奏家の意志で鳴らされたのか断定できない。
  • 演奏家が一つの和音を四つの音で鳴らしたつもりが、鍵盤の押し方が十分でなかったため全部しっかり発音されていなかった可能性がある(ハンマーは当たらなくてもダンパーが離れて弦が解放されたことで共鳴した可能性もある)。逆に演奏家が意図せずミスタッチとなってしまった音でも客観的に録音作品としては「あり」な音である。
  • 即興演奏であるため、本人さえわからない、もしくは覚えていない可能性もある。

言い訳を並べてしまいましたが、わずか数分間の中で音楽家が何をどうしたかという意図をつかむということは、音程のみをとらえて書き出す作業だけでは済まないことを知らされます。

クラシック音楽に置き換えれば、いかに楽譜に多くの情報が集約されていたとしても、誰も大作曲家の演奏を完全に再現することはできないし、そこにこそ歴史のミステリーやロマンスがあり醍醐味でもあるので、あくまで音楽的に不自然に聞こえないレベルであればよいかな、と感じています。

楽譜ですので、録音という音源に頼らずとも十分演奏を楽しめる品質を求めていきたいという思いはあります。本格的な演奏会で取り上げていただけるような楽譜、ジャズを学びたい人の教材として大いに役立ってくれる楽譜を提供していけるよう努めてまいります。

これより印刷物の製作に移ります。発売の際はこちらのブログでご紹介いたします。お楽しみに!

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